10.<ジャスパー(1)>

 ジャスパーは田舎の小さな観光町です。ロッキー山脈の雪解け水をたっぷり運んでいく川、高速道路、それに大陸横断鉄道という3つの流動物(?)に寄り添うようにというか、くっつくようにしています。
 この町のはずれにある林の中にバンガローがたくさんあって一つの部落の様です。中心にちょっと大きな建物があります。そこがこのバンガロー群の経営主体でしょう。

     バンガローみたいな宿泊所
     バンガローみたいな宿泊所

 事務手続きを済ませると早速指定された部屋に向かいました。我々の部屋は2棟つづきの建物で、中は外観とは違ってちょっとしたホテルの様でした。
 荷物をおいてひと休みしてから、さっきの中心の建物にまた出かけました。そこに食堂があるのです。売店や休憩所などもあって、観光客が大勢いました。夕食をたらふく食べて、ちょっぴり幸せだなぁと思ったり、こんな程度で幸せになれるなんておれもずいぶん落ちぶれたもんだなぁ、とかいろいろ下らないことを考えていたような気がします。

     食べきれないよぉ!!
     食べきれないよぉ!!

 この時に限らず食事はいつも”たらふく”でした。とにかく量が多いのです。体格が全然違うんですよねむこうの人は。食べる量も違う。我々は一皿づつ別のものを頼んでほぼ一人分を三人でわけて食べました。それで充分なんです。
 食事中私のななめ前のちょっと離れたテーブルで話しながら食べている二人のカナダ人(だと思います)が目にとまりました。いや、べつに他人の食事をじろじろ眺めるつもりじゃぁなかったんですが、でもびっくりしてその二人から目をはなすことができなくなってしまいました。正確には二人のうち片方の人です。
 その人の前にある皿のなんと大きなこと。その大きなお皿に山のように盛られた食べ物。さらにはその上からあのぐるぐる回しながらかけるスパイスを、それこそいつまでもいつまでもぐるぐるぐるぐるとやっているのです。
 二人は何か夢中で話していたので、もしかして話に気をとられて自分のやっていることに気付いていないんじゃぁないかなと心配になりました。
 でもそのあと猛烈な勢いで食べはじめてべつにスパイスをかけ過ぎたような様子はなかったから、ちゃんと分かってやっていたんですね。あぁよかった。あのぐるぐるはいったい何回くらいやったんだろうか。かぞえておけば良かったなぁ。
 食事を終えて、バンガローに戻ることにしました。外はまだ明るかったのですが、あれは何時頃だったでしょうか。とにかく夜9時頃まで明るいので昼なのか夜なのか、我々の感覚では判断できません。
 それはともかく、いくら歩いてもなんだかさっきの見覚えのある建物にたどり着きません。でもバンフの時と違ってまだ明るかったことと各バンガローには番号ついていたり、ところどころに案内版があったおかげで、あぁ今歩いているのは全然逆の方向なんだなと高度な推理を働かせて、やっとのことで懐かしの我が家じゃぁなかった我がバンガロ-に到着いたしました。
 もう!! いったい何回道を間違えれば気が済むんだ!!

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