11.<ジャスパー(2)>

 二人用のバンガローだったので、ベッドが二つしかありません。そこで、さすが若者は元気ですねぇ。F美はソファーに寝ることになりました。みんな疲れていたせいか、すぐに眠ってしまいました。というか、私はすぐ眠っちゃったらしくて良くは分かりません。
 翌朝、出前を頼んで部屋で朝食をとりました。電話すれば持ってきてくれるらしく、F美が注文しました。えっ、何ですか? お前が電話するはずないって? ま、そう言うわけです。
 でも出前を頼んだのは、レストランに行ってまた迷子になるのが恐くなったからでは決してありません。一度くらい三人だけで食べるのもいいじゃないかと言うだけのことです。(出前ではなくて、ルームサービスだそうです。おんなじだとおもうけどなぁ・・・)

 食後、ベランダの椅子に座って辺りをながめると、あのカモ鹿に似たエルクがあちこちに居ました。林の中からゆっくりと出てきて何か食べている様子です。草の芽でもさがしているんでしょうか。ゆっくりゆっくり、のんびりのんびりと歩き回っていました。

 あぁなんてのどかなんだろう。やっぱり動物までもおおらかで大陸的なんだなぁと感心していたその時、今度はものすごい勢いで駆けてくる二匹の小動物・・・りすの登場です。
 二匹はだんだんこちらへ近づいてきました。追いかけっこしているみたいだなぁなんて話していたのですが、一匹がもう一匹にいきなり飛びかかりました。むしゃぶりついたみたいな感じです。

    いきなりとびかかりました
    いきなりとびかかりました

 「わぁ、エッチしてるぅ!!」と、F美は大喜び。さっそくテーブルの上に放り出してあった自慢のカメラをひっつかんで飛び出していきました。
 ずいぶん近くまで行って撮っていたのですが、りす君たちはおかまい無し。自分達のことだけに夢中になっていました。
 子孫を残すことは一生の重大事。人間が近づいたくらいで止めるわけには行かないのだろうなぁとあらためて感慨ひとしおでした。
 でもさすがはりす君たち。子孫繁栄の営みの最中も2匹重なったままあっちへちょこちょこ、こっちへちょこちょこと地面を這い回っています。

  高い木に登っても生の営み
  高い木に登っても生の営み

 そのうち、二匹はその態勢のままスルスルと木にのぼっていきます。あきれたことに、のぼる時ものぼってからも態勢はそのままです。  しばらくそこに居たのですが、やがてもっと高いところへ登っていってついに見えなくなりました。最初に追いかけっこしていた時から20~30分は見ていたでしょう。かれらがそれから後どのくらい続けていたかは分かりません。
 F美が家に置いていったアルバムにはその時のりす君たちの真剣な姿が10枚ほど残されています。(いや、F美はまだ生きています。元気です。)
 その日は夕方まで自由時間です。それで街に出て買い物でもしようかと言うことになりました。実はカナダで私はどうしても手に入れたい物があったのです。それは以前から考えていたことではなく、この旅の中で見つけた物ですが・・・。  で、さっそくそれを手に入れるべく、元気よく出かけたのです。

10.<ジャスパー(1)> ←          → 12.<ジャスパー(3)>